どうすればいいの?簡単には終わらないゴミ屋敷の掃除

近年、大きな社会問題として注目を集めているのがゴミ屋敷です。景観を損ねるだけでなく衛生面や防犯面においても悪影響があるうえ、近隣住民とのトラブルに発展するケースも多く見られます。このような問題は、決して他人事ではありません。

ご自宅や実家、隣接する家屋がゴミ屋敷化し、自身が当事者になってしまったとき、一体どうすればいいのでしょうか。今回はゴミ屋敷の対処法と、行政の取り組みについて取り上げます。

ゴミ屋敷とは?

ゴミ屋敷とは、大量のゴミが放置されている建物や土地のことを指します。しかしどこからがゴミ屋敷で、どこまでがそうでないかといった明確な法的区分はありません。近隣住民から苦情が寄せられ、ゴミで溢れる建物や土地がトラブルの原因と見なされている場合に用いられる言葉です。

ゴミ屋敷は全国各地で報告されており、近年さまざまなメディアで取り上げられ社会問題化しています。国土交通省が2009年に行った調査によると、全国の250の自治体がゴミ屋敷に頭を悩ませていることがわかりました。この問題の背景には家主の認知症や生活意欲の低下、近隣住民との交流の無さなど、複雑な要因が絡み合っています。

そのため核家族世帯数や高齢化率の上昇とともに、今後も増加の傾向にあると推測されます。

ゴミ屋敷の問題点

それでは、ゴミ屋敷の問題点を具体的に見ていきましょう。

衛生面での問題

まず挙げられるのが、害獣・害虫の増加や悪臭の発生といった衛生的な問題です。これは家主だけではなく、周辺にお住まいの方にまで広く健康被害をもたらします。

治安と安全に悪影響を及ぼす

次に懸念されることは、景観や治安の悪化など、周囲の環境に悪影響を及ぼすことです。大量のゴミは他のゴミの不法投棄を誘発し、地域全体の治安悪化につながります。また家主の管理が行き届かないことが多いため、放火やボヤ騒ぎが生じたケースも実際にありました。

さらにひどい場合は、湿気による床板や柱の腐食により、家屋の倒壊の危険性も考えられます。

交通の妨げになる

ゴミが私有地では納まり切れず公道にはみ出して、安全な通行の妨げになっている例もよく見られます。この場合、災害発生時の避難に支障が出たり、緊急車両が通行できないといった深刻な問題になりかねません。

それでは、実際にゴミ屋敷化してしまったご自宅や実家、親類宅などを片付けなくてはならないとき、どうすればいいのでしょうか。

家がゴミ屋敷に!できることは?

ゴミ屋敷の規模が小さい場合、自力で解決することも不可能ではありません。しかし数か月から数年、数十年かけて蓄積したゴミを一掃するためには、かなりの手間や時間がかかることを覚悟しなければなりません。

あらかじめ重要なものを紙に書き出すなどして、計画的に進めることが大切です。実際に片付けを行う際、どこから行えばいいでしょうか。まずは玄関先などの出入り口に近い場所から始め、ゴミを運び出す経路を確保しましょう。片付けは一部屋ずつ行い、大きなものから順番に処分していくと効率的に進めることができます。

それでは、ゴミ屋敷の規模が大きいときはどうすればいいでしょうか。一軒まるまるゴミで埋まっているような場合、全てのゴミを一人で分類し、運び出すことは現実的には非常に困難です。処分先を見つけること自体が難しいケースもあるため、大量のゴミを前にどこから手を付けていいのかと途方に暮れてしまうことも考えられます。そんなときは、専門業者に頼むというのもひとつの方法です。

ひとくちに専門業者と言っても、不用品回収業者や便利屋、特殊清掃などいくつかの選択肢があります。予算や状況に応じて、適切な業者に依頼するようにしましょう。ゴミ屋敷の片付けの実績が豊富なところは作業に無駄がないため、長年の悩みの種がたった一日で片付いてしまうことも少なくありません。

害獣・害虫対策や清掃に関する知識もあれば、より心強い存在となるでしょう。では近隣の住宅がゴミ屋敷となっている場合は、どうすればいいのでしょうか。

ゴミ屋敷に対する行政の対応

実は2017年現在、ゴミ屋敷を直接取り締まる法律はありません。なぜならゴミ屋敷はあくまで私有地にあるため、放置されているものがゴミであるか、財産であるかの判断を家主以外の人物が下すことができないからです。

ゴミの一部が公道に溢れているときなどは、廃棄物処理法や道路交通法が適応される場合もありますが、両者とも私有地に関しては基本的に対処ができません。そこで、各自治体はゴミ屋敷に対するさまざまな条例を制定し、この問題に取り組んでいます。

2013年、東京都足立区で「足立区生活環境の保全に関する条例(通称:ごみ屋敷対策事業)」が制定されたことを先駆けとして、新宿区や大阪市、宇都宮市などでも同様の条例の制定が行われました。

ゴミ屋敷に関する何らかの条例を施行している自治体の数も、ここ数年の間で着実に増えています。2015年には、京都市が災害の避難時に影響があるとして、「ごみ屋敷対策条例」に基づいて私道に置かれていたゴミを強制的に撤去しました。

ゴミ屋敷に対して、行政による代執行が行われた全国初の例として、大きく報道されたことも記憶に新しいですね。このように行政の介入には、各自治体やケースによって、調査、勧告、指導、代執行などと異なります。近隣のゴミ屋敷でお困りの方は、いちどお住まいの自治体に相談してみてはいかがでしょうか。

先に述べたように、ゴミ屋敷の家主には一人暮らしの高齢者が多く、その背景も単純ではありません。抜本的な解決を目指すには、福祉課などとの連携や地域ぐるみの対策が必要と考えられます。いずれにせよ、ゴミ屋敷問題に関する行政の取り組みは、まだまだ始まったばかりです。